約 1,869,334 件
https://w.atwiki.jp/minnaaa01/pages/138.html
____ / ̄ ̄ ̄\ /___ \ / ___ ヽ /| |´・ω・`| | \ /\ |´・ω・`| /\ びきに~ / .|  ̄ ̄ ̄ .| \ / _, |  ̄ ̄⊂二二) | i.▲────.▲─ヽ、_ヽl -★──★-| └二二⊃ 。 l ∪ |_____| | ̄ ̄ ̄▼ ̄ ̄ ̄ノ .| ★ .| ヽ_二コ/ / ヽ / \ / _____/__/´ __ヽノ____ ____ / ̄ ̄ ̄\ / ___ \ / ___ ヽ / |´・ω・`| \ / |´・ω・`| \ ふんどし~~ /  ̄ ̄ ̄ \ / _,  ̄⊂二二) | i ヽ、_ヽl | | └二二⊃ l ∪ | | |──┬─┬──ノ .|─┬─┬─.| ヽ_二|___| / ヽ |__| / _____/__/´ __ヽノ____`´
https://w.atwiki.jp/perotanfenix/pages/29.html
#ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (URL) ベラボー 名前 ベラボーマン 分類 ゲーム 説明 正式には、超絶倫人ベラボーマン。フェニがプレイする予定であるゲームの一つである。プレイ済みの人々の評判から察するに、神ゲーだと思われる。 配信での扱われ方 配信内でこのゲームが絶賛されることは多い。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1915.html
ロングビルは口を半開きにして、呆然としていた。 安宿の一室で、ルイズとワルドがミノタウロスと戦った時の様子を、ロングビルに聞かせていたのだ。 壁に寄りかかっているロングビル、目の前には、ベッドに座り足を投げ出している少女がいる。 この少女が魔法を使わずにミノタウロスを倒したなど、誰が信じられるだろう。 元々知能が高く生命力も並はずれて強いミノタウロス、頭に深い傷を負っていたとはいえ、それを倒してしまうなど普通は信じられない。 だが、ロングビルはそれが嘘ではないとよく解る、ルイズと対峙したとき、ロングビルは鉄の塊を練金で作り出し、ルイズを挽肉同然にしたのだ。 それでも彼女は生きていた。 細い手足のこの少女が、ルイズが獰猛なミノタウロスを倒した姿を想像しようとして……目眩がした。 「どうしたの?」 ベッドの上に座るルイズがロングビルの顔をのぞき込む。 「ちょっと、あんたの無茶苦茶さに呆れてただけよ…まったく、あんたがいりゃトリステインは安泰だねえ」 ロングビルが両手を肩の高さにあげ、掌を上に向けて『やれやれ』というジェスチャーを交えて呟く。 「そうでもないわよ」 それを見たルイズは、少し自虐気味に笑った。 「私はいずれ倒されるわ…誰かにね。私ほど権力者にとって不都合な存在は無いのよ」 「そうかもしれないけどさ」 正直、ルイズが誰かに殺される姿など、想像できない。 虚無の魔法と、吸血鬼の力を持つルイズを殺せる人間などこの世に存在するとは思えない。 仮に強力なエルフが相手だとしたら、ルイズでも危険かもしれない。 しかし、ロングビルの知るエルフはといえば、ティファニアとその母だけ。 温厚で戦いを嫌うエルフが如何に強力な魔法を使ったとしても、シエスタの波紋が吸血鬼にとって猛毒だとしても、ルイズを殺せるとはとても思えなかった。 ルイズは、ふとカーテンの隙間から外を見た、既に夕日が差しており、空は赤くなっている。 「そろそろ外も暗くなるわね……学院に戻らなくていいの?」 「そうだね、じゃあ、あたしはこれで帰らせて貰うわ」 そう言ってロングビルがドアノブに手をかける、ルイズはちらりとワルドに目配せしてから、ロングビルと共に部屋を出た。 廊下で、ルイズはロングビルに耳打ちする。 「ティファニアがね、『危険なことはしないでね』って言ってたわよ」 「…あの子に、会ったのかい?」 ロングビルがルイズの顔をまじまじと見る、ルイズは笑みを浮かべると、いたずらを思いついた子供のような笑顔を見せた。 「私、アルビオンに潜入したって言ったでしょ?そこで…ほら、子供達も元気だったわ」「ああ…そっか、元気ならいいのさ」 静かに笑みを浮かべるロングビル、どこか懐かしそうに目を細めていた。 「まだワルドに知られたくないから、ここで簡潔に言うわ。彼女は私と同じ系統の使い手よ」 「………」 先ほどのはにかみは何処へやら、ロングビルの口元は笑ったままだが、目つきは途端に厳しくなった。 「詳しいことはこの紙に書いてあるわ。読んだらすぐ燃やして」 ルイズは、胸に巻いたボロ切れの中から、宿帳の切れ端らしき紙を取り出し、ロングビルに手渡した。 無言でそれを受け取ると、ロングビルは急ぎ足になり、ぱたぱたと階段を下りていった。 階段を下りていくのを見届けたルイズは、すぐにワルドの待つ部屋に戻った。 ギィ、と不快な音を立てて開かれる扉を見て、ワルドが意外そうに呟く。 「おかえり、早かったな」 「見送るだけだもの」 ルイズは返事をしつつ、ボロボロのマントを放り投げて、ボロ布の下着姿になった。 その姿は、とても貴族とは思えないみすぼらしい姿だが、その眼光は先ほどまでとは違い、鋭く輝いていた。 ルイズは両手を上に上げて背伸びをし、ボキボキと音を立ててながら身長を変化させる。 アンリエッタとの身長差は約5サントほど、それぐらいなら体の中に入った吸血馬と自分の骨だけで調節できる。 それが終わると、今度は髪の毛を引っ張り長さを揃える、そして顔の筋肉を指で押しつつ、表情を確認していく。 宿に入る前に手に入れてきた染料を髪の毛にふりかけ、わしわしとかき回すと、ルイズの髪の毛は深い紫色に染まっていく。 それを見てワルドは、ルイズがアンリエッタに変装しようとしているのだと理解した。 「…凄いな。”フェイス・チェンジ”でも身長までは変えられれないのに。どこからどう見ても姫様じゃないか…ん?」 ルイズの姿は、表情さえ調節すればアンリエッタ姫そのものとしか思えないほどだ。 しかし、魔法衛士として間近でアンリエッタを見ていたワルドには、ルイズの変装には致命的な欠陥があると気づいてしまった。 「”フェイス・チェンジ”みたいに顔も変えられれば便利なのだけど。 ……ちょっとワルド、どこ見てるの?」 「いや……」 ワルドの視線に気づいたルイズが、ワルドを見つめ返したが、ワルドは顔を逸らしてしまった。 「どこ見てたの…?」 ルイズがワルドに詰め寄る。 「いや、何でもないさ、本当に」 ワルドは誤魔化したが、視線は明らかにルイズの胸を見ていた。 「どこ比べてるの?」 「いや。本当に、何も」 その日、安宿の一室から断末魔の悲鳴が上がった。 深夜。 二の月が雲に隠れ、トリステインの空が暗闇に覆われた頃。 女王となったアンリエッタの居室へと、一人の女騎士が急いで足を進めていた。 アンリエッタの居室を警護する衛士は、女騎士の足音に気が付くと、それを制すかのように扉の前に立ちふさがった。 「こんな時間に、陛下に何用だ」 衛士は、あからさまに女騎士を見下した態度で、冷たく言い放った。 「銃士隊のアニエスが参ったとお伝えください。私は、いついかなるときでもご機嫌を伺える許可を陛下よりいただいております」 衛士は苦い顔をした、アニエスはそれを見て「またか」と思った。 アニエスはシュヴァリエを得たが、平民であるが故に、王宮内での扱いは酷く悪い。 女王アンリエッタの身辺警護を担当する親衛隊の肩書きも、王宮内でのやっかみの前では、どこか頼りなかった。 この衛士にもやっかみはあった、魔法衛士隊よりも強い権限を、平民の女傭兵風情が持っていいはずがないと考えていた。 衛士はアニエスを見下したまま、慇懃に言い放つ。 「陛下はお休みあそばされておる、日が昇ってから出直……」 アニエスは、身長で勝る衛士を、無言で見上げていた。 あからさまにアニエスを見下していた衛士の態度、特にその表情が、みるみる恐怖に変わっていくのだ。 いつの間にかアニエスの後ろには、一人の男が立っていた。 マザリーニ枢機卿である。 「君、火急の用だ。陛下にお取り次ぎを願う」 「ハッ!」 マザリーニが静かに言い放つと、衛士は慌てて敬礼し、居室の扉を開いた。 アニエスとマザリーニの二人は、冷や汗をかいている衛士を無視して、静かにアンリエッタの居室へと入っていった。 それからしばらくして、マザリーニ、アンリエッタ、ウェールズの三人が、アンリエッタの執務室に集まった。 ウェールズは寝間着も兼ねられる簡素なシャツに、上着を着てマントを羽織っている。 つい先ほどまでデルフリンガーと話をしていたらしく、デルフリンガーはウェールズが携えて来た。 デルフリンガーをテーブルの上に置くと、鞘から二割ほど刀身を露出させ、デルフリンガーも会話に参加できるように準備した。 それが終わると、コンコンとノックの音が響き、返事を待たずに扉が開かれた。 執務室に入ってきたのは、ボロボロのマントを羽織った女性。 次に入ってきたのはフードを被った男だったが、その男は首に枷が嵌められており、首と右腕が枷でつながれていた。 更にその背中にアニエスが剣を向けている、アンリエッタは驚き「まあ」と呟いて、口元を隠した。 執務室の扉が閉じられると、ウェールズは杖を持ち『ディティクト・マジック』続けて『サイレント』のルーンを唱えた。 外界の音が遮断され、不自然なほどの静けさが執務室を包む。 『よー嬢ちゃん。元気そうで良かったぜ』 「久しぶりねデルフ、姫様も…今は陛下とお呼びすべきかしら。それに皇太子殿下も、枢機卿も、お久しぶり」 ボロボロのフードを外してルイズが微笑む。 それを見て、アンリエッタは思わず席を立ち、ルイズに近寄った。 「ルイズ…心配したのよ、ああ、でも無事で良かったわ」 アンリエッタがルイズに近づいて手を取ると、ルイズは困ったような顔をするばかりで、アンリエッタの手を握り返そうとはしなかった。 「どうしたの?」 「あの…私、しばらくお風呂に入ってないのよ。今の私ちょっと臭いわよ」 アンリエッタが鼻で息を吸うと、確かに汗のような、焦げ臭いような、埃くさい臭いが鼻につく気がした。 「……そ、そんなこと気にしなくても良いですわ」 と言いつつも、アンリエッタはルイズから手を離す、ルイズは仕方がないとでも言うように苦笑した。 「話が終わったら風呂を用意させますわ。それにしても……」 アンリエッタが、フードを被った男に視線を向けると、つられて皆の視線が集中する。 「………陛下も、皇太子殿下もよくご存じのはずよ」 ルイズはそう呟きつつ、男の顔を隠しているフードをめくり、顔を露出させた。 そこにいたのは、裏切り者のワルド子爵その人だった。 「なっ」 ウェールズは咄嗟に杖を手に取った。 執務室が緊張感に包まれ、マザリーニ、アンリエッタの視線も途端に厳しくなる。 「殺気立つのは止めて。とりあえず…そうね、アルビオンに潜入した時のことから説明するわ」 ルイズはそう言って微笑む。 マザリーニは、驚いたままのアンリエッタ、席から腰を浮かせているウェールズの二人に着席を促す。 アンリエッタが自席に着いたのを見届けてから、ルイズとデルフリンガーによる報告が始まった。 井戸水が、洗脳効果を持った水の先住魔法に汚染されていたサウスゴータ地方の都市。 自称6000歳のデルフリンガーが、水の先住魔法から『アンドバリの指輪』を思い出した。 アンドバリの指輪はどんな怪我もたちどころに治す力を持つ、それどころか、死者を操ることも、生きている人間の心を操ることもできるという。 ルイズはワルドに発言を促した、実際に死者が蘇る姿を見ていたのは、この場ではワルドしか居ないのだ。 ルイズが『ディスペル・マジック』で解除した水の先住魔法。 ワルドが目撃した『クロムウェルによる死者蘇生』 デルフリンガーの記憶に残る『水の先住魔法との戦い』 それらの情報は、アンリエッタ、ウェールズ、マザリーニの三名だけでなく、ワルドに剣を向けているアニエスをも驚かせていた。 そもそも、アルビオンの王党派にも落ち度が無かった訳ではない。 ウェールズの父、ジェームス一世は厳格で誇り高い王であった…と言えば聞こえはいいが、若くして王になった時から強烈な貴族権威主義であった。 国力を高めるため、王は崇高な理念を持って自ら機敏な政治を行った…と言えば聞こえは良いが、視点を変えれば独裁色の強い政治であったことも否めない。 反乱軍レコン・キスタ、彼らの革命が成功したのは、クロムウェルの持つ『アンドバリの指輪』の力だけではない、アルビオン貴族達の不満も同時に爆発していたのだ。 トリステインに幻滅し、レコン・キスタの誘いを受けたというワルドの話を聞き、ウェールズは自身の双肩に戦死者の重みを感じた気がした。 更に、ワルドとの戦い、船を吹き飛ばした虚無の魔法、ワルドの母、裏で糸を引いていたリッシュモン、ミノタウロスとの戦い…… 想像を超えた話が、ルイズの口から語られていった。 一通りの話をし終えると、皆は一様にため息をつく。 ウェールズは考える。 家臣達を殺したワルドにも、ワルドなりの事情があった。 ワルドの行った裏切り行為は決して許されることではないし、許してしまうこともできない。 だが、ウェールズは、ワルドにどこか…なぜか同情してしまう。 処刑すべきか、執行猶予を与えるべきか、思うように決考えられない、少しだけ苛つきを覚えた。 マザリーニにしてもそうだ、リッシュモンにはそれなりの信頼を置いていた。 100%信頼していた訳ではない、少なくとも仕事の面では信頼できると思っていた。 だが、ワルドの母が辱められたと聞いたとき、アニエス達の調査によって、ぼんやりと浮かんでいた不自然な金の動きが、はっきりと一つに繋がった。 マザリーニは、自分の甘さを恥じた。 アンリエッタはうつむいていた。 膝の上に置いた手が強く握りしめられ、肩は小刻みに震えている。 アンリエッタの視線がワルドに移るが、ワルドは何も言わず、ただ黙って突っ立っていた。 しばらくの沈黙の後、アンリエッタが口を開く。 「…ワルド子爵の処遇については、後ほど伝えます。しばらくは杖を取り上げ、王宮で監視下に置くことになりますが……ルイズはそれでかまいませんか?」 ルイズは、隣に立つワルドを見る、ワルドはルイズにほほえみを返すばかりで、何も言わなかった。 「ワルドは…リッシュモンに復讐して、死ぬつもりで帰ってきたの。リッシュモンを殺す権利を保障してくれれば何も言うことは無いわ」 「わかりました、アニエス、ワルド子爵を王宮内に監禁し、直ちにリッシュモンの身辺を調査しなさい」 「いや、お待ち下さい」 突然、マザリーニが口を開いた。 「王宮内ではいけません、すぐに気付かれてしまうでしょう。……しばらくの間、石仮面様と共に地下に潜伏して頂けませんか」 マザリーニ提案はルイズにとって有り難かった。 しかしウェールズの表情を見ると、納得がいかないとでも言いたそうな顔をしている。 ワルドは、ニューカッスル城で王党派を百人近く殺したのだ。 それを野に放つなど、ウェールズが納得できるはずがない。 「殿下。私は、ワルドに復讐を果たさせると約束しました。ワルドの処刑はそれまで待って頂けませんでしょうか、決して逃がしはしません。」 ルイズがウェールズに向き直る。 ウェールズは目を閉じた。 死んでいった家臣達を思い出す。 彼らは、ウェールズの決断を許してくれるだろうか? 家臣達は想像の中でただ微笑むばかりで、何も言ってはくれない。 残されたアルビオン王族としての重責、それがウェールズの肩に重くのしかかった。 「…『石仮面』殿を…いや、友人としてミス・ルイズを信用しよう。ワルド子爵の処遇は僕から口出ししないことにする」 「僕は、ワルド子爵の行いを許すことはできない。また彼の汚名を返上することは許さない。だが……君を憎みきれないのも確かだ」 「戦艦『ロイヤル・ソヴリン』の艦長を務めたサー・ヘンリー・ボーウッドという男がいる。彼は職務に忠実な軍人だからこそ王軍に牙をむいた」 「憎むべきは戦争だ、君個人を憎んでどうにかなるものじゃない…僕が言いたいのは、それだけだ」 ワルドは、ただ黙ってウェールズに跪いた。 すべての話が終わる頃には、既に空は明るくなっており、居室に戻ったアンリエッタを身支度を調える侍女達が迎えていた。 結局彼らは一晩中会議をして、徹夜してしまったのだ。 若いアンリエッタとウェールズはともかかく、マザリーニは眠そうに欠伸をしながら部屋に戻っていった。 ワルドは手かせを外されたが、顔を隠した状態で王宮の地下倉庫に匿われている。 そこで昼を寝て過ごし、夜になったらルイズと共に城下町へと出る予定なのだ。 ルイズは、王宮に務める兵士達が使う水場で、体の汚れを落とした。 用意された平民風の着替えを着て、厚手のローブを身にまとう。 そして、そのままウェールズの部屋を訪ねた。 ウェールズは徹夜の疲れをみじんも見せず、来客に応対していた。 各地に散らばったアルビオン王党派の貴族と連絡を取り合い、レコン・キスタ打倒の計画を練らなければならない。 ウェールズに、休んでいる暇など無いのだ。 ルイズを部屋に通したウェールズは、部下に命じて人払いをする。 ルイズはデルフリンガーを背負ったままウェールズの部屋に入り、ソファに腰掛けた。 向かい合わせに座ったウェールズが、ふぅー…と長いため息を吐く。 「だいぶ疲れてるわね」 「まあね。……君こそ疲れてないのかい?」 「ミノタウロスでお腹いっぱいよ」 「やれやれ、その体力は羨ましいな……」 ウェールズはまた欠伸をして、目をこすった。 子供の頃に遊んだ友人達は皆死んでしまった、海賊に扮してお互いに笑いあった仲間達も皆死んでしまった。 今、ウェールズが欠伸をするほど気を許せるのは、ルイズとアンリエッタしか居ない。 ルイズは、そんなウェールズを不憫に思ったが、不憫だと口に出すことはかえって失礼だと思い、黙っていることにした。 侍女の持ってきた紅茶を一口飲み、カップをソーサーの上に置く。 ほんの少し、沈黙が流れた。 「大公に、忘れ形見がいたわ」 「…なんだって?」 ルイズの呟きは、ウェールズを一瞬で覚醒させた。 「名はティファニア。大公の娘さんよ、今はサウスゴータ地方で、小さな孤児院を開いて隠れ住んでいるわ」 「そ、それは、本当なのか?」 「本当よ。直接会ってきたもの」 「そうか…」 ウェールズが顔を押さえて、俯いた。 「ねえ、これは絶対に約束して欲しいの。ティファニアを権力争いに巻き込まないで。いずれ彼女の存在は知られると思けど。それまでは彼女を争いに巻き込まないで欲しいの」 「ああ、解っているよ、解っているとも。 アンリエッタにも、マザリーニ枢機卿にも言わなかったのは、それを心配してのことだろう?」 「ええ」 「心配も無理はないさ。用心に越したことはない」 「そうね。ハーフエルフだと知られたら大変だものね」 「………」 ウェールズの顔は、『美男子が台無しだ』と思えるほど、驚きに染まっていた。 「そんな顔して驚かないでよ。彼女から聞いた話を全部話すわ、だからよく聞いて」 ウェールズが頭を振って気を取り直す、すぐさま『サイレント』と『ディティクト・マジック』を唱え、ルイズに続きを促した。 ルイズの口から語られたのは、ウェールズにとって驚くべき”真実”であった。 大公がエルフを妾にしていただけでなく、娘までいたという事実。 確かに『始祖ブリミルへの重大な反逆』だと言われれば、それまでかもしれない。 しかし、目の前には吸血鬼と化していながら人間に味方するルイズがいる。 ウェールズは、エルフに対する認識を改める必要があると感じた。 「それと、貴方から預かっていた『風のルビー』。それとニューカッスルから脱出したときに持っていた『始祖のオルゴール』これもティファニアに預けてあるわ」 「それは虚無の使い手である、君が持っていた方がいいんじゃないか?」 「いいえ、私の分はアンの持っている『水のルビー』と『始祖の祈祷書』よ。『風のルビー』と『オルゴール』は彼女が持つべきモノなの」 「まさか」 「そのまさかよ。王族の血を継承しているが故に…ね」 ウェールズはしばしの間思案し、呟く。 「ハーフエルフか…ロマリアが黙っていないな。ダングルテールの大虐殺の件もある…」 「アニエスもダングルテールの大虐殺を調べてるとか言ってたわね。それって何なの?」ルイズの質問に、ウェールズは言いにくそうに口ごもったが、意を決したのかルイズを見据えて語り出した。 「ダングルテールという村があった、そこはトリステインには珍しい移民中心の村だったそうだ。その村で流行した疫病を広げないために、村人が全員焼き殺された」 「……何よ、それ。アニエスがそれを調べてるってことは、もしかして」 「彼女の出身地はダングルテールらしい。僕も最近知ったことなので詳しくないが、どうもロマリアの先代教皇がそこに絡んでいるらしい」 ロマリアと聞いて、ルイズが首を捻る。 「なぜロマリアが関係するのよ」 「二十年近く前、トリステインとアルビオンで新教が流行ったんだ。ダングルテールの住人は新教に鞍替えしたんだが…どうやらそれが原因で異教徒狩りの標的にされたらしい」 「じゃあ、疫病が出たと言うのは?」 「アニエスは全くの嘘だと言っていた。ダングルテールに出入りしていた行商人からの証言でもそれは明らかだそうだ」 「冗談じゃないわよ……」 「エルフを敵視するのは、始祖ブリミルの歴史から見て仕方ない事だ。だが、ミス・ティファニアが虚無の使い手として生まれたのは、始祖のお導きだと主張すれば……」 「もしティファニアの存在が知られても、ロマリアを牽制できるかもしれない?」 ルイズの結論に、ウェールズが頷く。 「ティファニアか…その人は、争いが嫌い、復讐も嫌いなのか………それなのに、僕たちは人間同士で、何をやっているんだろうね」 ウェールズの呟きは、『サイレント』に包まれた部屋の中に消えていった。 一方、時を同じくして、魔法学院に一台の豪華な馬車がたどり着いた。 従者が馬車の扉を開け、金髪の女性が馬車の中から下りてくる。 馬車を出迎えたのは魔法学院の学院長オールド・オスマンと、モンモランシー、そしてシエスタだった。 「オールド・オスマン。お久しぶりでございますわ」 優雅に一礼した金髪の女性に、オールド・オスマンは満足そうに頷き、挨拶を返した。 「久しぶりじゃのう、アカデミーでは元気でやっておるかね?」 「ええ、オールド・オスマンの22年前の論文、読みましたわよ。精神力の根底を探る方法としての波紋法とその応用…でしたわね」 ちらりと横を見ると、先ほどから緊張のあまり固まっている二人が視界に入った。 「貴方がシュヴァリエを賜ったミス・モンモランシーと、ミス・シエスタね。噂は聞いているわよ」 「「はっ、はい!」」 二人は緊張して、同時に返事をしてしまう。 金髪の女性は、そんな二人にも一礼し、名を名乗った。 「私はエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール。 ラ・ヴァリエール公爵夫妻からの依頼を伝えに参りました。 モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。 並びにシエスタ・シュヴァリエ・ド・リサリサ。 お二人の『治癒』の力をお借りしたく参りました。 私の妹、カトレアを助けるために協力をお願い致します」 シエスタは思った。 この人、ルイズ様の面影がある。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/gods/pages/49170.html
アブラボウ(油坊) 日本の民話に登場する妖怪。 油を盗んだ坊主が妖怪となったもの。 滋賀県に伝わる。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/57087.html
アブラボン(油坊) 日本の民話に登場する妖怪。 カイカ(怪火)の一。 夏の夜に現れる。 京都府に伝わる。
https://w.atwiki.jp/kuroeu/pages/5271.html
ウルリカ・グロス 弟くんがアニエス達を不死者にして奴隷ハーレム作った事どう思ってるか気になる - 名無しさん (2024-07-02 08 58 21)
https://w.atwiki.jp/gods/pages/57767.html
ゴラボーシ カシランボの別名。
https://w.atwiki.jp/www-iris/pages/1106.html
【名前】 パラボール 【読み方】 ぱらぼーる 【種類】 ウイルス 【属性】 電気属性 【チップ】 プラズマボール系 【登場作品】 「3」 【英語名】 パラボール:Eleballパラライカ:Elesphereパラクロッサー:Eleglobe 【詳細】 角の生えた小鬼を、ボール状にデフォルメしたようなウイルス。どうみても暗殺教室の殺せんせー。 空中を斜め移動で動き、しかもロックマンのいるエリアにもお構い無しに侵入してくる。 このウイルスは、「ロックマンが前の列に立っている」とそこで一旦停止し、 時計回りに回る2つのサンダーボールのようなもので攻撃してくる(マヒ効果は無い)。 エリア中央で停止されると、周り8マスを使ってグルグル回避することを強いられてしまうので、 あえてパラボールの軌道を読んで最前列に立ち、停止した所で一歩退いて攻撃を叩き込むのがベスト。 上位種名は「パラライカ」、「パラクロッサー」でSP版も存在。 ランクが上がるごとに移動速度が上昇し、誘導が難しくなるが、実は移動するルートは決まっている。(*1) カウンタータイミングは、『攻撃に移るために静止した少し後、攻撃が開始されるまで』の間。 これが少々曲者で、攻撃に移るために静止した『時』ではまだ早く、攻撃が開始されてからでは手遅れである。 静止した後に『ほんの一瞬だけ間を開けて』、それからトドメを刺す必要がある。 雷様モチーフつながりで、2までのパララ系が変異した可能性がある。 また、5ではパラボールとは移動方法も攻撃も異なるピカラー系が出たが、ロックマンのエリアに侵入して電撃つながりで、パラボールから変異派生したのかもしれない。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7683.html
前ページ次ページSeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger アルビオンから帰ってきて、スコールはおよそ5ヶ月ぶりにトリステイン魔法学院へとその足を向けていた。 (……また来るとは思ってなかったな……) 「レオン?」 「……何でもない。早くこいつを届けよう」 と、ジャケットの裡から便箋を取り出す。 結局指定されていた宿に、ロングビル本人は来なかった。警戒されていたのかも知れない。使いになっていた子供から手紙を受け取って、すぐさま帰ってきた。 今日明日にも開戦の兆しが見えており、既に艦隊は出立したとも聞く。手早くこちらを手空きにしたかった。 「何でもないという顔か、それが。ああ……召喚されたんだったな、お前は……」 動揺を見せたスコールの素性を思い出す。 「ああ。俺がハルケギニアで初めて入った建物だ」 「何なら私一人で行くか?」 「大丈夫だ。遺恨が無い訳じゃ無いが、いちいちそれに引っ張られてもいない」 と、率先して足を進める。 そうして入った学院は、明らかに何かがおかしかった。 「……人気が無さ過ぎるな」 この戦争に際して、ほぼトリステイン全土の総力を結しているという事から、学院の男子生徒までが徴用されたという話は既に聞いている。だがそれでも、門に衛兵の一人も見あたらないというのはおかしな話だった。 妙な胸騒ぎを覚えつつ、不慣れな敷地内へと足を踏み入れ探索することしばし。建物の一つを囲むようにしている十数名の人影があった。 「何者だ、貴様ら!」 何故か、視界にはいるのは鎧を纏った女性ばかり。その内の一人が振り向いて誰何してくる。 「傭兵のスコール・レオンハートだ」 「その相棒のアニエスだ」 敵意がないことを示すため、両手を上げながら名乗ると、彼女たちの大半が驚きの表情に変わった。 (何だ? レオンハートの名前が出た途端に騒いで) 「そう言うあんた達は何者だ。何か起きているようだが」 腕を下ろしても大丈夫そうだと判断して下ろしつつ、尋ねる。 「……我々は女王陛下直属の銃士隊の者だ。……現在、賊が大半の女子生徒と職員を人質にとっている」 後半は少し間を置いて、迷った末に告げたように思えた。 「人質?」 「職員もか?」 予想外の事態に、二人は顔を見合わせる。 「それで貴様達は何をしに来たんだ」 ここで隊長格らしい女性が前に出てくる。 「俺たちは、先日ここの学院長に依頼を受けていた。その任務が完了したので報告に来たんだが……」 「こんな事になっているとはな……」 「ちょっと失礼するわよ?」 そこで他の隊士をかき分けながら現れたのは3人の人影だ。 「やっぱり、あの時の傭兵さん達ね」 「…………」 「スコール・レオンハート……!」 「お前達は……」 ラグドリアン湖で会った、火のメイジと風のメイジ、そして 「ヴァリエール……」 出来ることなら、顔を合わせずにここからは立ち去っていたかったのが本音だ。 「生徒は下がっていろと言っただろう!」 「あなた方だけでは状況を変えられないから、手を貸して差し上げると言っているんでしょう?」 銃士隊隊長の言葉に平然と返し、スコール達に向き直る。 「あなた達も、手を貸して下さるかしら?」 「人質の救出か?」 「ええ。実はあんまり時間もなくてね……」 「ちょっとツェルプストー! あんたこいつに頼むつもり!?」 ヴァリエールが目を三角にしてツェルプストーと呼ばれた少女に怒鳴る。 「もちろん。アナタは知らないかもしれないけどね、彼、並みのメイジよりずっと強いわよ」 「それは……知っているけど……」 不満げなヴァリエールを余所に、スコールとアニエスへと視線を向ける。 「それで、どうかしら?」 「……こちらとしても、依頼主に何かあれば事だが」 「ああ。ここは協力すべきだろうな」 ライオンハートも帯刀せず、両の手を挙げて敵対の意志を示さないまま、スコールは食堂へと近づいていく。 もちろん、敵対の意志を見せていないとは言っても賊側に認知された行動ではないから声がかけられる。 「おい貴様! ここに近づけば人質の命は無いぞ!」 ここまで近づければ十分だ。あとはG.F.の発動準備を開始しつつ隙をうかがうのみ。 「この学院の長に雇われていた傭兵だ。任務をこなしたが……学院長が死んだ場合どこから成功報酬を請求出来るのか教えて欲しい、と言伝てもらいたい」 「そんなこと知るか! 早々に離れろ!」 窓からこちらへと杖を掲げてみせる。 「それは困る。こちらも慈善事業をやっている訳じゃない。直接会う必要はないんだ。学院長に取り次ぐだけで……」 全てを言うより早く、スコールは雷に撃たれた。 (警告も無しか……!) 一瞬身を仰け反らせ、前方へ体が傾いでいく。 ざわ、と後ろと食堂内から声が上がる。 「良いか!? 早く女王を連れてこい! さもなくばここにいる全員が――」 窓辺からの声が辺りに響く。つまりそれは、 (俺から、目を離したな!) 倒れる中、前方へ手を付きクラウチングスタートの構えに。 「――こいつと同じ様に――」 一番体重が掛かる時の反動を利用してダッと一気にかけ出す。オートヘイストは掛かっていないが、それでもトリプルをジャンクションしてあるスコールのスピードは並みの人間とは桁違いだ。見張りがそれに対応出来ないうちに、窓枠越しで右ストレートを見舞う。 倒れ込む犯人によってまた別の悲鳴に満たされる食堂へ目を向け、全ての対象を補足。 「G.F.召喚、セイレーン! サイレントヴォイス!」 一瞬にして辺りの風景が食堂から海辺へと変わって、打ち寄せる波飛沫に、座っていた女子生徒達が悲鳴と共に慌てて立ち上がる。 「おい、勝手に動くな!」 賊がそうは怒鳴るが、彼ら達自身、いきなり変わった辺りの光景にすっかり動揺していた。 そこへ、音が聞こえてきて食堂にいた者達は全員がそちらへ目を向ける。 海辺の浅瀬、そこに突き出た一つの岩礁。その上に座った裸の亜人がハープを奏でている。頭から生えているのは髪か羽か、誰も見たことのない亜人だった。 (――ほ、これは眼福じゃ。が――) 何か危険な匂いはした。ダテに齢を重ねた訳ではない魔法学院学院長オールド・オスマンの経験が直感へと結びつき警鐘を鳴らすが、とらわれの身の中、動くに動けない。 そして気付けば、全員再び食堂の中にいた。 一体何が起こったのか? 特に誰に向けるでもなくそう呟こうとしたオールド・オスマンは有ることに気付いた。 ――声が出ない。 今度こそどうしたのかと、周りに意思疎通を試みようとして、悟った。全員が、首を押さえている。つまり、この場にいる者達全てが自分と同じ状況になっているのだろう。 正体不明の幻覚――らしきモノと声が出せなくなった自分たち。 じたんだをふむ者の音が聞こえてくるからコモン・マジックのサイレントの類では決してない。この症状に晒されているのは場ではなく自分たちだ。 そこでオールド・オスマンはまた別のことに気付いた。 何で、食堂の真ん中に紙風船など浮かんでいるのだろうか? カッと食堂中が光に包まれるのを察する。 黄燐を包んだ紙風船を使い、火と風のメイジによって行われた即席のスタングレネードだ。 スコール達に話された段階での作戦は、この紙風船だけで突入する予定だったのだが、それでは自棄になった賊のめくら撃ちの魔法で死傷者が出ないとも限らない、と渋られていたのだ。 そこでスコールは、それよりも前に自身が食堂内にいる者達全てを口の聞けない状態にするとし、作戦を補完していた。 「突入!」 閃光の確認と共に銃士隊隊長の号令が下され、前衛と後衛に別れて突入が開始される 「レオン!」 同時に走り出しながらも、誰より早く走ってきたアニエスが投げたライオンハートを受け取り、半透明の青い刀身を抜き放つ。今回は対メイジ戦が、それも特殊任務に向けられるような強敵が想定されているため、アニエスの方もジャンクションは済ませていた。 「行くぞ!」 発光に目をやられないようにと隠れていた壁から、窓側へ移りアニエスと共に内部へ突入する。 口の聞けなくなった事と、視界を奪われたことで内部は行動を躊躇する者がほとんどで、半制圧状態とも言える状況だった。ただ、一人を除いては。 「動く奴が居る!」 この場にいるオールド・オスマン以外の男ということで、そいつが敵対者であることはほぼ間違いない。その人物は手近な女子生徒の一人を掴むと、自分の体に引き寄せ盾代わりにしつつ食堂の出口へと向かった。 その手に持つ杖はレイピア型のような刺殺出来るデザインには見えないが、 (あの体格、下手をすればそのまま首をへし折られかねないな) 要するに、人質に出来てしまっているのだ。 「あれ、モンモランシー!?」 「これは……!? くっ! 行動不能に陥っている賊を捕縛、急げ! 君たちは他の生徒達の誘導を!」 突入して、状況を理解した銃士隊隊長が他にそう命ずる。と、それに弾かれるように男は女生徒を連れたまま、食堂から表へ飛び出していた。 「あの男、目が利いているのか!?」 「そうらしい。目を閉じていたのか何なのか……」 驚きの声をあげる隊長と共に、男を追って表に出る。以前ヴァリエールが囚われていた時と同じく、距離を詰めて擬似魔法のデスをたたき込めば何とかなるだろうが……。 「全員下がれ! 人質を取っている!」 後詰めに回っていた面々が、距離を保ちながらの後退を余儀なくされる。そんな中―― 「? コルベール! 下がって頂きたい! ひとまずは人質の安全を……」 学院に所属する男の中でただ一人難を逃れていた人物が、離れるどころか近づいていっていた。 「ミスタ・レオンハート、彼を話せるようにしてくれるかな?」 「出来ますがしかし……」 銃士隊隊長の言葉を遮り、妙な殺気を伴ったコルベールからの申し出にスコールは難色を示す。 「どのみちこの状況では魔法が使えようと使えまいと大した差はありません。それよりはまず意思の疎通を図ることが重要でしょう」 (会話で隙を作り出すつもりか……?) 真意を推測し、それに乗ってみる。ジャンクションを切り替え、男に向かって手を向ける。 「G.F.セイレーン、アビリティ ちりょう」 ぱぁっとその男を光が包む。 「は、ははぁっ! お前は……。お前は! お前は! お前は!」 口がきけるようになった男の口調から察せられたのは驚きと、 「捜し求めた温度ではないか! お前は! お前はコルベール! 懐かしい! コルベールの声ではないか!」 そして歓喜だった。 「何年ぶりだ? なあ! 隊長殿! 二十年だ! そうだ!」 (隊長? 何のだ……) 「オレだ! 忘れたか? メンヌヴィルだよ隊長どの! おお! 久しぶりだ!」 「メンヌ……ヴィル……?」 (ん?) 隣にいる相棒が、男の名を繰り返したが、今はとりあえずそのメンヌヴィルとやらの様子をうかがう。 メンヌヴィルの興奮ぶりに対して、コルベールは静かだ。 「わたしの教え子から、離れろ」 ただし、その静かさの裏には別なモノが見えるが。 「教え子? なんだ? 隊長殿! 今は教師なのか! これ以上おかしいことはないぞ! 貴様が教師とな! いったい何を教えるのだ? 〝炎蛇〟と呼ばれた貴様が……、は、はは! ははははははははははははははははッ!」 そこで腕の中で震えている少女に顔を向ける。 「きみたちに説明してやろう。この男はな、かつて〝炎蛇〟と呼ばれた炎の使い手だ。特殊な任務を行う隊の隊長を務めていてな……、女だろうが、子供だろうがかまわずに燃やし尽くした男だ」 その話の内容に、ハッとスコールは隣の相棒を見た。余りにも似通っている。 では噛み締めるように名前を繰り返したのはつまり…… 「メンヌヴィル! それに、コルベールと言ったな!?」 コルベールの静かな怒りも、メンヌヴィルの高笑も遙かに上回る怒声を放つアニエス。その場にいる全員の目が彼女に集中する。 「貴様らが……貴様らの居た隊が魔法研究所実験小隊か!」 「ほう! オレたちのことを知っている者が居たとは光栄だな」 心底嬉しそうに、軽くアニエスの方へ向けた顔を、僅か数瞬で距離を詰めたアニエスの右膝が強襲する。反動で出来た滞空時間を利用し、もう一度右の、今度はヴォレーキックを頭部へと見舞う。 メンヌヴィルが吹き飛ぶ傍らで、放り出される形になった少女の側へとスコールは駆け寄る。 「G.F.セイレーン、アビリティ ちりょう」 助け起こしつつ、サイレスを解除する。 「怪我はないか?」 「ちょ……ちょっとすりむいた……」 半泣きになっているのは、人質にされていた恐怖か、それとも安堵か、或いは両方か。 ともかく、このままではアニエスの戦いに巻き込まれかねないと、少女を抱えて離脱する。 アニエスの剣が趨り、ブーツが舞い、拳が唸った。メンヌヴィルにいくつもの打撃と斬撃を見舞っている。もちろん、ジャンクションの上乗せでだ。 「ぐ、く、お! オレは……! コルベールと、だ! フレイムボール!」 猛攻の中で、必死に反撃の魔法を向けるが 「そんな炎で私の怒りまで吹き消せるかぁっ!」 属性防御ファイガで防ぐどころか自身の活力へと転換し、その燃える体のままに体当たりを行い、 「待っていたぞ、仇を討てる、この時をなぁっ!」 どぉっ! とメンヌヴィルの体が塔に打ち付けられる。 「く……う、う……馬鹿な……貴様、人間か……」 右手の剣は憎き仇敵を討たんが為 「人間などとうに止めた。あの時の仇を討つために!」 左手を添えつつ振りかぶり 「オレは……オレは死ねん! コルベール隊長と……あの時の、続きを……!」 二十年前に着火した恩讐の種火を業火に変えて 「もう二度と貴様らの好きにさせるものか! その続きは冥府でやれっ!」 一刀両断。 「お、ごぉ、お……」 袈裟切りに切り捨てられ、メンヌヴィルはついにその目的の欠片すら行えぬままに、塔の外壁にもたれて果てた。 「奴もすぐに送ってやる……」 背後の壁ごと斬ったためにアニエスの剣は完全に刃が潰れていた。 握りを返し、反対側の刃を外へと向けて振り返る。 「王軍資料庫の名簿を破ったのは、貴様だな?」 その視線の先にいるのは、全てを察した様子のコルベール。 「そうだ」 「メンヌヴィルには言い損ねたな……教えてやろう。わたしはダングルテールの生き残りだ」 「……そうか」 静かに、呟く。 「弁明も開き直りもしないのか」 冷ややかにそう尋ねつつ、正眼に構え直す。 「……討たれる覚悟が出来ているととらせてもらうっ!」 振りかぶった高速の一撃は、 「待て、アニエス」 彼女が高速に至る力を与えた男によって防がれた 「何故止める!? その男は、私の捜していた最後の一人だ!」 ライオンハートで剣撃を受け止めながら冷静に、答える。 「ここで斬ることは出来るだろうが、それじゃああんたが捕まる。俺としても、あんたの敵討ちに手を貸したいとは思うが、それ以上に捕まって欲しくない」 スコールの言葉に、ようやく徐々に周りが見えてくる。 銃士隊の面々はあっけにとられた顔をしているし、助け出された生徒も恐ろしいものを見るような目を向けている。 「……少し頭に血が上っていたようだ」 血を拭い、剣を納める。 もう一度だけコルベールを睨み付けた後、つい、と視線をずらした。 なんだ今の戦いは。 ルイズは目を見開いていた。 銃士隊の訓練、コルベールに習った擬似魔法、そんなのはまるで役に立たないと言わんばかりの傭兵アニエスの戦いぶりと、それを鍔迫り合いを経て制止して見せたスコール・レオンハート。 (……敵わない) もし、アンリエッタから彼を討伐するように『命令』されていたとしても、一矢報いることすら敵わずに無駄死にを晒してしまうだろう。 ならば、今成すべき事は一つ。 アニエスは少し離れたところで目を瞑り、スコールはライオンハートを鞘に収めて銃士隊隊長へ向く。 「他に討ち漏らした連中はいるか?」 「い、いや、他は全て私の部下が捕縛している」 「そうか。なら、すぐにみんなを喋れる様にしてくる。人質達はまだ食堂か?」 「ああ、頼む……アニエスの名は知っていたが……何とも……」 隊長の独り言のような言葉を背に聞きつつ、食堂へと歩を向けるスコール。その前に、ルイズは立つ。 「……ヴァリエール?」 「スコール・レオンハート、話があるわ」 「……早く人質達を喋れるようにしたい。その作業をしながらになるが」 「っ……ええ、いいわ」 真面目に人の話を聞けと怒鳴りたいところだったが、とりあえず学友や教師達のことを思い出して従う。 「あなた、この前ウェールズ皇太子を殺めたそうね」 歩き出したスコールに尋ねると、不思議そうな顔をしてルイズへと視線を向けてくる。 周りに居た銃士隊の者で、ルイズの声を聞いた者はハッと目を向けるが、ルイズはそちらには気付かなかった。 「? ……誰のことだ」 「とぼけないでっ! アンリエッタ様の前で、ウェールズ皇太子を亡き者にしたでしょうっ!?」 「……知らない。俺がこの国の女王に会ったのは、あんたを送った時と、タルブ平原の戦いの報償を受けた時の二回だけだ」 きっぱりとそう答えつつ、食堂への戸を潜る。 「何ですって……?」 余りにも堂に入ったたたずまいに、ルイズが飲まれかけたところで、別の方から声がかけられる。 「ああ、ようやく来たわね、ミスタ・レオンハート。これ、どうしたらいいのかしら? どうやってもみんなが喋れるようにならないんだけど」 キュルケの質問に、一つ頷きながら、学院長の側に向かう。 「大丈夫だ、俺が治せる。みんなが混乱しないように、順番に待たせておいてくれ。 G.F.セイレーン、アビリティ ちりょう」 ぱっと光が散り、オールド・オスマンの沈黙状態が解除される。 「お、おお……喋れるぞ! いやぁ、一時はどうなることかと思ったが、助けられてしまったのう」 こりゃ追加料金も払わなければならんかな? とおどけるオスマンの視界に、ルイズが入ってくる。 「待ちなさい! アンリエッタ様がアンタの姿を見たっておっしゃってるのよ! 陛下が嘘をついたとでも!?」 何だかどこかで聞いたような問答だなと、オスマンは目を細める。 「……俺は女王にも皇太子にも会っていない。 アビリティ ちりょう」 キュルケの誘導で並んだ女子生徒と教師達の沈黙状態解除をスコールは始める。 「あー、ミス・ヴァリエール。話は後回しにせんかね? この通りミスタ・レオンハートは忙しいようじゃし、その件についてはまぁワシも少々聞き知っておるでな。答えられる範囲では答えよう」 「アビリティ ちりょう」 横目でその光景を見ながらちりょうを続ける。喋れるようになった者達も、ルイズの放つ威圧感に萎縮して、或いは白い目をしつつそそくさとその場を去っていった。 「……ではオールド・オスマン。お聞きしますが、あの事件で現れたというウェールズ様は本物なんでしょうか? ワルド子爵によって殺められた筈なのですが」 「う……む、それは……」 流石にそこまでは知らないオスマンが言い淀んだ所で、スコールが振り向く。 「あれは本物のウェールズ皇太子だ」 「アンタ、やっぱり……!」 「ミスタ・レオンハート?」 オールド・オスマンが良いのか、と目で利いてくるが、これは幾らでも言いつくろえる。それに出来るだけルイズとの繋がりは早めに切っておきたいのがスコールだ。 「あの事件に関して、別件で情報が必要だったのである程度調べてある」 そこでキュルケへ視線を向ける。 「ラグドリアン湖で、俺が水の精霊と契約を交わしたのを覚えているか?」 「え? あ、ええ、確か指輪を……そっか」 スコールの指摘にキュルケは何かを思い出したように頷く。 「アンドバリの指輪ね」 「アンドバリ……?」 「ふむ、水の先住魔法を封じ込めた指輪じゃったかな?」 その老成された知識を呼び起こしながらオールド・オスマンが呟いた。また一人沈黙を治してスコールが振り向く。 「そうです。死者に偽りの生を与え、人を意のままに動かす指輪。長いので経緯は省きますが、俺はその奪還を依頼されています。推定ですが、現在の指輪の所持者はアルビオン帝国皇帝のオリバー・クロムウェル……」 「ほ……」 スコールの言葉にオスマンは一つ感心したようなため息を出すと、スッと目を細める。 「つまり、そのウェールズ皇太子というのは、指輪の力によって蘇えり……」 「アルビオン皇帝に操られていた、と考えています」 そこで再び、スコールは治療に専念し始める。 「ふーむ……王家への反乱のみならず、人の意志をねじ曲げるとはオリバー・クロムウェル、外道じゃな」 吐き捨てるようにそう言ったオスマンの顔がルイズへ向けられる。 「結局ミスタ・レオンハートの手を煩わせてしまったが、これでミス・ヴァリエールの疑問も晴れたかな?」 「は、はい……」 ルイズの胸中に飛来するのは、安堵と怒り。 あのウェールズ皇太子は本物だけれど、意志が無い操り人形だった。つまりそれは、狙うべき仇は目の前の男よりもあの皇太子の決死の覚悟を冒涜したレコン・キスタの連中なのだと言うこと。 (……こいつを相手にしなくて良くなってほっとするだなんて……情けない!) 悔しさにギリ、と奥歯が鳴るが、今はそんなことを言っている場合ではないだろう。今は兎も角一刻も早くこの事を女王に伝えなければ。 そうルイズが意識を固め、手紙をつづるためにひとまず自室へ戻ろうと踵を返したところで、銃士隊の一人が駆け込んできた。 「水メイジは居るか!? 魔法が使えるようになっているならすぐに来てくれ! コルベールが流星に打たれた!」 前ページ次ページSeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger
https://w.atwiki.jp/gcmatome/pages/760.html
超絶倫人ベラボーマン 【ちょうぜつりんじんべらぼーまん】 ジャンル アクション 対応機種 アーケード 発売・開発元 ナムコ 稼動開始日 1988年5月 配信 バーチャルコンソールアーケード【Wii】2009年10月6日/800Wiiポイント(税5%込)アーケードアーカイブス【Switch】2023年6月8日/838円(税10%込)【PS4】2023年6月8日/837円(税10%込) 判定 バカゲー ポイント 古きよき特撮コメディの世界観を再現ヘンな敵キャラ目白押し 概要 ゲーム概要 評価点 問題点 総評 移植版 余談 その後の展開 概要 1986年にリリースされた純和風アクションゲームの傑作『源平討魔伝』の制作チーム『源平プロ』が再結集して手がけた横スクロールアクションゲーム。 蘇った平家の亡者・景清の復讐劇というダークな設定だった前作と180度変わり、昭和の高度経済成長期の日本を舞台にしたノスタルジックな世界観の中、アルファ遊星からやってきた謎の宇宙人から「銀の力(*1)」と「超変身物質」と「へらとボー(*2)」と共に御近所と地球の平和を守る使命を与えられた主人公のサラリーマン・中村等が、正義の味方・超絶倫人ベラボーマンとなって悪の科学者・爆田(ばくだ)博士の野望を打ち砕くために戦う特撮コメディタッチの物語となっている。 企画・制作及び特殊デバイス開発は音楽担当の中潟憲雄が手がけた。 ゲーム概要 システム自体はオーソドックスな横スクロールアクション。ステージ総数32面。 中にはボス戦のみのステージやアイテムのみのボーナスステージもある。 ステージは全部で3種類。ロボット軍団が登場する町内、海底軍団が支配する海底、サイボーグ忍者軍団の本拠地である忍者屋敷の3つの世界を、爆田博士が発明した物質転送装置によってたらい回しにされながら突き進み、ステージ最後にいるボスを倒して進んでゆく。 海底ステージでは水中形態「シーベラボー」に変身しミサイルと爆雷を武器に進む横スクロールシューティングとなる。 ライフ制で画面左下の体力メーターが0になった時点でゲームオーバー。 カウントダウン終了前に「銀の力」を追加する(=クレジット投入)と、ミスした地点からその場復活で継続プレイ可能。 2D横スクロールアクションゲームとしては極めてオーソドックスであり、キャラのサイズがでかくなったり、トップビューの迷路を進んだりと変化に富んでいた『源平~』と比べると、単調な印象は否めない。それでありながら本作を独特な作品として印象付けている大きな要因が、「主人公の攻撃手段が伸縮自在の体によるパンチとキックと頭突き」という設定と、それをシステム上で表現するべく開発された独自コンパネ「タッチレスポンススイッチ」、通称「ベラボースイッチ」である。 ボタンを叩く強弱により、攻撃のリーチとジャンプの高度が大中小の三段階に変化するというもの。 機構としては、ボタン内の縦に2つ設けられた接点間の通過時間を検知している。つまり、正確にはボタンを押す「強さ」ではなくボタンを押し込む「速さ」に反応しているわけである。 強弱のつけられない電子鍵盤楽器において、鍵盤を押しこむ度合いによって強弱を擬似的に再現する「タッチレスポンスキー」からヒントを得て開発されたという。 ちなみに初代『ストリートファイター』ですでに似た形態のスイッチが本作に先んじて搭載されていたが、仕組みは異なりあちらは感圧式センサーによる強弱判定である。 道中にあるアイテムを取ることによってパワーアップが可能。 体力回復の他、攻撃に貫通性能が付く、ゴール地点まで一気にワープできるといった特殊アイテムも存在する。 ザコを倒すと落とす福引券を既定枚数集めると、アイテムキャリアーの福引男が出現し、ランダムでアイテムを落として行く(*3)。 彼にもこちらの攻撃を当てることが可能だが、一定数当てると激怒してアイテムを一切出さなくなり、ステージクリア後のおにぎりなどの回復アイテムも貰えなくなってしまう。逆に言えばコレを利用しての縛りプレイ(*4)も可能。 評価点 ベラボースイッチの独特な操作性 ベラボースイッチの独特な操作性によりキャラクターとの一体感が強く気持ちいい。 操作系統が変更された移植作ではなかなか味わえない感覚である。 古き良き特撮コメディの懐かしさあふれる世界観 60~70年代の高度経済成長期の日本・埼玉の新田駅付近を舞台にした昔懐かしい特撮ヒーローコメディをオマージュした世界観と、それを彩るナムコならではの魅力に溢れた、多彩かつ珍妙で濃いキャラクターたち(*5)。 どのキャラも豊富なアニメパターンでよく動き、そしてよく喋るのでとても賑やか。しかも、プロの声優を起用しているので棒読みもなし。 主人公のベラボーマンは攻撃ボタンを連打する度に「ベラボーベラボーベラボー!」と、うっとうしい位に叫び、体力が尽きた際には「あいたー!」と叫んでくれる。 忍者屋敷の中ボスで本作品で特に高い人気を誇る紅一点敵キャラ・わや姫の動きとそのテンションは、もはや異常と言っていいほどエキセントリック。手裏剣を投げる際のセリフ「いくわよ!」が「ちくわよ!」に聞こえる(そして投げてくる棒手裏剣がちくわに見える)という空耳ネタもリアルタイムでプレイした世代にとってはお約束(笑) その他にも、中村に変身物質を授けた下半身がUFO型の宇宙人・α遊星人、主人公中村の勤める保険会社の商売敵ミロ保険のベテランセールスマン・妙島扮するライバル・ブラックベラボー、頭のちょんまげがミサイル砲になっていて、降参して土下座する振りをして騙し討ちしようとするピストル大名(*6)、歴史上の偉人の脳を自らに移植し、頭部以外の全身をサイボーグ化した上に髪型が核爆発のきのこ雲という典型的なデザインのマッドサイエンティストながらランジェリー研究家という意外な一面を持つラスボス・爆田博士など、ビジュアル面でのインパクトもさることながらやたら細かく設定の作りこまれた濃いキャラクターたちが目白押しである。 設定資料には実際の怪獣図鑑などでお馴染みの内部図解などの詳細な設定があり、雑誌やサントラにも掲載された。 散りばめられた小ネタ 源平討魔伝における障害物である要石と鉄球がそのまま登場したり、「だじゃれの国」を意識してか、あちこちにダジャレメッセージやスタッフのお遊びメッセージが散りばめられているなど、作り手側の遊び心が随所に盛り込まれているのも見逃せない。 ふきだしで表示されるキャラクターのセリフにも、源平討魔伝から引用したと思われるものがある。 町ステージのボス・ゾルタンの「これで勝ったと思うなよ」や爆田博士の「そんなに死にたいのなら殺してやろう」など。また、ラスボス戦のBGMでは源平討魔伝のラスボス戦BGMのフレーズの一部が流れる。 ちなみに、主人公が100円玉(銀の力)で変身するという設定は『源平討魔伝』における「亡者である主人公・景清が「ぷれいやなる」異次元の者の布施(100円)で蘇った」という設定のセルフパロディである。 源平討魔伝から引き続き担当となる中潟憲雄が手がけた音楽もいかにもヒーローものらしくカッコいい。 コンティニュー後はその場復活で継続する。全面クリアまでがかなりの長丁場なので良心的。 コンティニューを決定した時のメッセージも豊富(あまり連コを続けると「このゲーム、そんなに面白いですか?」などと問われたり……)。 また、ゲーム終了時の演出もただGAME OVERと表示されて終りではなく、元の姿に戻って帰宅した主人公を妻が玄関先で出迎えるシーンが挿入されるなど、演出のひとつひとつにスタッフの拘りが感じられる。 問題点 ボリューム過多 ステージ数が多いためアーケードのアクションゲームとしては冗長。 前作に当たる『源平討魔伝』もステージ数が多くプレイ時間は長かったが、あちらがルート選択によりある程度攻略時間を短縮できるのに比べ、本作にはルート分岐がなく32面をノンストップで攻略しなければならない。 32面ものステージ数に反比例してステージの種類が町・海底・忍者屋敷の3種類のみなのであまり代わり映えがしない。 あまりよろしくない難易度バランス 体力制を取っているが自機の当たり判定が大きく容易に被弾する上、喰らった後の無敵時間が無いに等しい。敵の攻撃の中には複数の体力メモリを奪うものもある上、連続でダメージを受けてしまう状況も珍しくないため、道中の回復アイテム程度では間に合わないという事態になりがち。 敵弾は基本的に自機の攻撃で相殺出来るのだが、貫通拳(攻撃に貫通性能を付加するアイテム)なしではその相殺に手間取り、相手に攻撃を当てられないという場面も多い。 特にラスボスに差し掛かる前のボスラッシュの連続ステージがかなりの難所となっている。 このため1コインクリアはかなり厳しい。コンティニュー後、その場復活できるのが救い。 壊れやすいベラボースイッチ 押し込む速度によって強弱を判定するという性質上、筐体のボタンが磨耗しやすい上、仕様上強く押す必要がないにもかかわらず公式側が「ボタンを強く押す」と喧伝していたこともあって必要以上に強い力で連打するプレイヤーが続出してしまい、デバイスの故障が頻発した。 対策として6ボタン式の筐体に基板を移し、ジャンプ・攻撃の大中小を各3ボタンに割り振って稼動させる店もあったが、壊れやすさを理由に撤去してしまう店も多かった。 そのため基板の出回りはあまり多くなく、今では基板のみの価格もかなりのプレミアものになっている。更にベラボースイッチが新品で付属していると倍以上に価格が跳ね上がる。それほどまでにベラボースイッチの現存数は少ない。 レトロゲームを重視しているゲームセンターでも、本作の基板は持っているがベラボースイッチがないので店頭稼働させられない……などというケースも少なくない。 当時のゲーム雑誌で手製のベラボースイッチの作り方の特集が組まれたこともあったほどである。 その他バグや不具合 初期バージョンでは永久パターンが存在した。 永久パターン防止キャラであるウ号は、海底ステージでは通常のボスとして配置されているステージもあった。ただしノーマルの状態だと倒すのは難しく、ボスのウ号の直前には「これで倒してください」とばかりに強化アイテムが置いてあった。 その強化アイテムは福引男がランダムで出したため永パが出来てしまった。修正バージョンでは点が入らないようになっている。 またそれ以外にも微妙な修正が施された箇所が多く、基板のバージョンが複数存在する。 総評 ボタンの強弱で攻撃の強弱を判定するという仕様もすでに先行作品が存在し、2D横スクロールアクションゲームとしても極めてオーソドックスなつくりであるため、ゲーム性自体にはさほど目新しい点は見あたらない。 ゲーム性だけを見れば平凡な出来でありアーケードゲームとしてはプレイ時間が長くて冗長という欠点もあるが、それを補って余りある個性豊か過ぎるユニークなキャラクターや、明るく大らかな雰囲気に満ちた特撮コメディならではの世界観、そしてベラボースイッチによってもたらされるキャラクターとの一体感と「触れて楽しい」という感覚を存分に味わえる点が、本作最大の魅力と言えよう。 独自仕様のコンパネの宿命上、コンパネも含めた家庭用への完全忠実移植が限りなく不可能なことがなんとも惜しまれる点である。 移植版 『超絶倫人ベラボーマン』 (※PCE版 発売日:1990年7月13日/開発:ナウプロダクション) 面数が24面に減らされ、ボタンを押す長短により攻撃の強弱を変える仕様に変更された。 マップ構成も一新されており、難易度がAC版に比べて低下。家庭用向けに遊びやすく調整されている。 その他、商標が絡む背景オブジェの描き換え、キャラボイスの減少、フキダシによるセリフの一新、すべてのボス戦前に吹き出しによるセリフ演出を追加、新規BGMの追加、一部のアイテムの効果の変更などの変更点がある。 止めをさせず最後まで逃げていくだけだった中ボスがラストステージでの決着で断末魔と共に倒れたり、福引男がラストステージ手前でアイテムをくれると共に激励の言葉をかけてくれたりと、ゲームプレイ中の新規演出により、AC版よりドラマチックになっている。 海外版表記は『BRAVOMAN』(ブラボーマン)。名称の変更にあわせ攻撃時の音声も「ベラボー!」から「ブラボー!」に差し替えられている。 ライバルキャラ・ブラックベラボーの”正体”はアーケード版とは変更されており、アーケード版には無かった水中ステージでのブラックシーベラボーとの対決が新たに追加されている。 + ネタバレ注意 AC版では、ブラックベラボーの正体は商売敵であるミロ保険のベテラン・セールスマン・妙島だったが、PCE移植版では、α遊星人に変更。味方であるはずの彼があえて敵として立ちはだかった理由は、「ベラボーマンを鍛えるため」とされている。 ただし、AC版でもブラックベラボーの目的自体は同様であり、戦闘前セリフでは「α遊星人からの愛のムチだ」と自ら名乗っている。 隠しモードとして、爆田博士とツインスキュレーン(赤)を除く全14体のボスキャラと戦う「禁じられた遊び」モードが追加されている。 戦う順番は自由で、事前にα遊星人によるボスについての簡単な解説もある。 その他、その場コンティニューや無限コンティニューといった裏技も用意されている。ただし、無限コンティニューを解除してしまう罠もある。 2007年5月22日よりWiiのバーチャルコンソールで配信された(※サービス終了につき現在はDL不可)。 『超絶倫人ベラボーマン』 (※バーチャルコンソールアーケード 配信開始日/2009年10月6日 ※サービス終了につき現在はDL不可) タバコ屋の看板や実在の社名や商標を含む背景の描き換え、1面の操作説明のセリフにおいて「レバー」が「十字キー」に変更されている点以外はオリジナルを再現している。 また、コントローラーの種類により操作系統を選択できるようになっている。 Wiiリモコン:PCE版と同様に、ボタンを押す長さでアクションの強弱を調整する。 大攻撃、大ジャンプ共に発生までに遅延が生じるため、先行入力等の工夫が必要になる。 クラシックコントローラ:ジャンプ・攻撃の大中小を各3ボタンに割り振って操作する(6ボタン筐体におけるプレイ方法の再現) 『超絶倫人ベラボーマン』(携帯アプリ版) PCE版を元にした移植。 『アーケードアーカイブス 超絶倫人ベラボーマン』 (※PlayStation4/Nintendo Switch版 配信開始日/2023年6月8日/販売:ハムスター) アーケード版後期バージョンの忠実移植。タバコ屋の看板はアーケード版通りだが、実在の社名や商標を含む背景についてはバーチャルコンソールアーケード版と同等。 こだわり設定ではゲームスピード調整、永久パターン防止キャラの出現タイマー表示、ステージセレクトの有無を設定可能。キャラバンモードは2面スタートと17面スタートの2部門となっている。 操作方式は6ボタン式のタイプA、PCE版と同じくボタンの押した長さで強弱が決まるタイプB、2本のアナログスティックを使うタイプC(*7)の3種類から選択可能。 2006年にバンダイから発売されたテレビ玩具『Let s TV プレイ CLASSIC』の『ナムコノスタルジアシリーズ』第3弾として本作の移植が予定され、発売予定まで立っていたのだが、残念ながらメーカーの都合により発売中止となった。 本作の世界観を活かしたミニゲームが同時収録され、なんと『ワンダーモモ』の主人公モモがミニゲームの自機としてコラボする予定だったという。 余談 本作の企画と音楽・ベラボースイッチ開発を担当した中潟氏によれば、最初から源平プロの2作目としてチーム内で企画が立てられたわけではなく「70年代の特撮ヒーローものの世界をオマージュしたゲームを作りたい」という個人的な思いから中潟氏自ら企画を立案し、源平プロのスタッフに再結集を呼びかけた、という経緯で制作された作品であったという。 中潟氏の本作への思い入れはかなりのものがあったらしく、本気でアニメ化を考えていたというが、残念ながら実現には至らなかった。 ナムコは合併前の時代から「キャラクター展開がヘタクソ過ぎて、せっかくの魅力ある過去のキャラクターの数々を宝の持ち腐れにしている」と一部ファンから評されていた(*8)(*9)。 本作が個性溢れる魅力的なキャラクターの数々で人気を呼んだこと、ゲーム中のキャラボイスに有名なプロの声優を起用していたことを考えるとなんとももったいない話である。当時のナムコ上層部からのゲーム自体への評判も芳しくなかったらしく、恐らくそのこともアニメ化が実現しなかった原因のひとつにもなっていたのかもしれない。 その後、『ナムコビデオゲームグラフィティ』シリーズ内で、出演声優陣によるオリジナルドラマパートとゲーム音源を収録したCDがリリースされた。 2014年まで海外版『BRAVOMAN』のショートコミックがウェブ連載されていた。そちらを基にしたカートゥーンアニメも製作され、Youtubeのバンダイナムコゲームス公式チャンネルにて視聴可能だった(制作サイトの閉鎖に伴い削除)。 初めて「エンディングのある業務用ナムコ作品」として、過去作品と最終ラウンド数が一致する(全32面はメトロクロスと一致)ゲームであった。 これに関してはメーカー側も意識しており、「モトス」の62面という中途半端な全面数は「ドルアーガの塔の60面とバラデュークの64面(作者の勘違いで実際は48面)の中間を取った」という程であった。 「精力絶倫」という四字熟語のせいか、超絶倫人という冠がプレイヤーのあいだで度々ネタにされる本作だが、本来「絶倫」とは「技量や力量が飛び抜けて優れている」と言う意味でしかない。 あくまでも「精力 + 絶倫」となってはじめて「精力が飛び抜けている」という意味になるのであって、「絶倫」だけで「性的にお盛んなこと」を指すわけではない。 そもそもの話し、「精力」それ自体も性的な意味合いの言葉ではなく、「心身両面における活力」といった意味の言葉である。「性欲」と勘違いしている人が多すぎる。スタッフ曰く「超・絶倫人」ではなく「超絶・倫人(=べらぼうに倫理的な人)」であるそうな。 ちなみに、ベラボーマンの名前の由来は中潟氏曰く「岡本(太郎)先生が太陽の塔を作る際に語っていた "べらぼうな物を作ってやる!" からきています」とのこと。 その後の展開 稼動から2年後の1990年に、卑怯な騙まし討ち戦法でおなじみの忍者屋敷のボス・ピストル大名を主役にしたスピンオフ作品『ピストル大名の冒険』がリリースされた。 源平プロ製と言われることが多いが、この時期には既にチーム自体が解散しており、メンバーの一人でナムコ第一開発部に残留した高橋由起夫氏(*10)が単独で開発した。 奇妙なバカゲーっぷりなど、本作の遺伝子を感じ取れる作風になっているものの難易度が非常に高いためで回りが悪く、知名度はかなり低い。 中潟憲雄などの一部スタッフはライフプランニング(現:KAZe)に移籍し、『暴れん坊天狗』を制作している。 本作のラスボスである爆田博士は、1990年発売のファミコン用RPG『デジタル・デビル物語 女神転生II』に狂人ドクター・バクタとして友情出演している。 旧地下鉄丸の内線の地下道に秘密研究所を構えており、そこで主人公が「アナミラン」というアイテムを渡すと石化回復薬「ペトラノン」(地霊アトラスの石化を解く為に必要)に作り変えてくれるというお助けキャラである。見た目は本作のキャラクターデザイン・金子一魔(現・一馬)の手により、世界観に合わせてかなり変わっているが世界征服の野望は相変わらずで、わや姫の開発に忙しくしている。 敵悪魔としてのパラメータ設定もされており、悪魔をランダムに呼び出すアイテム「あくまのかんづめ」を使うと稀に出現する。出現数は1体だが、会話をすると仲間を呼んで増えることもある。クローンだろうか? 2002年発売のワンダースワンカラー用シミュレーションRPG『ナムコスーパーウォーズ』(バンダイ発売)には主人公ベラボーマンが、2005年発売のプレイステーション2用シミュレーションRPG『NAMCOxCAPCOM』にベラボーマンを始めとして敵キャラも多数出演した。なお『NAMCOxCAPCOM』でのブラックベラボーの設定はAC版が元になっている。